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米、米麹のみの純米醸造のパイオニア  純米醸造酒の復刻に尽力した賀茂泉酒造

広島の酒

[投稿日]2021年02月16日 / [最終更新日]2021/03/22

東広島市西条に構える賀茂泉酒造の純米醸造酒は、淡い黄金色をしています。
「日本酒は無色透明」というイメージを持つ方は、少々驚くかもしれません。
同酒造の代表銘柄である純米吟醸「朱泉本仕込(しゅせんほんじこみ)」は活性炭素を使用せずにろ過を行うので、ほんのりと色味が残り、一口飲めば米のふくよかなうま味とコクが味わえます。
朱泉本仕込の商品ページはこちらから
同じく純米吟醸で「山吹色の酒」という銘柄があります。
純米吟醸酒を厚い土壁でできた蔵に寝かせ、常温で2年あまり、じっくりと熟成。活性炭素による濾過をしていないため、純米醸造酒ならではのナチュラルな山吹色で、米の味わいが感じられる芳醇な酒質に仕上がっています。
山吹色の酒の商品ページはこちらから
賀茂泉が追及するのは、日本酒本来の姿。
では「日本酒本来の姿」とは、何か。
日本では戦後、米不足などから質の低い三倍増醸酒(三増酒)が普及し、日本酒はまずい、くさい、悪酔いするという負のレッテルを貼られ、長く低迷します。
しかし、本来の日本酒は純粋に米と米麹と水だけで醸す、手作りの純米醸造酒です。それこそが「日本酒本来の姿」であると、その復権に力を注いできたのが賀茂泉酒造です。
賀茂泉では、米は全て広島県産米を使用しています。
特に山田錦は、標高が350メートルと高く、昼夜の寒暖差がある東広島市高屋の造賀(ぞうか)地区で生産しています。
水は蔵元から2-3キロメートル ほど離れた地にある龍王山からの伏流水です。
50年かけて湧き出た地下水は、適度なミネラル分を含む中硬水で、その水を仕込み水として使うことで酵母の醗酵が適度に促されます。
賀茂泉をはじめとする西条の蔵元は、この龍王山の水の恩恵を受けて酒造りをし、西条の地は酒都と呼ばれるようになりました。
賀茂泉も所属する西条酒造協会では、山を守ることが水を大切にすることにつながるとし、年に数回山の手入れを行っており、市民も参加し50~100人規模で清掃活動を続けています。活動の詳細はこちらからご覧ください。
土地の山と水を大切にし、純粋に米と米麹と水だけで醸す手作りの純米醸造酒を醸すのは人です。

賀茂泉の日本酒造り

賀茂泉では新谷寿之(しんたにとしゆき)杜氏が指揮をとり、蔵人7人が酒母の仕込み、麹づくりなど、役割分担して日本酒を造ります。
賀茂泉の酒造りはおおむね、10月下旬〜4月中旬頃まで酒造りを行います。
造りを行わない夏場は蔵内の掃除や設備のメンテナンスなどを行い、勉強会に参加するなど、造りの時期に備えます。
そんな賀茂泉の日本酒の魅力を、営業部のモワセ・ゴティエさんに聞きました。

米のうまみがあり、まろやかで深みのある熟成した日本酒が好きだというゴティエさん。賀茂泉の酒は「個性のあるしっかりとした味わいが魅力」と語ります。
中でも、自蔵の日本酒でゴティエさんが好きなのは「朱泉<本仕込み>」のぬる燗。
「デミグラスソースをかけたハンバーグ、脂がのった牛肉や豚肉料理に合います。お酒が肉の脂を洗い流してくれるので、肉料理が一層おいしくいただけます。40~45度程度にあたためた純米酒は、心地よく体に吸収され、悪酔いもしません」
日本の燗酒は、ご飯の代わりに温かい日本酒を飲む感覚、とゴティエさんは言います。
米が主食の日本の食生活では、ご飯とおかずはセットになっていて、ご飯を食べながらおかずをつまみ、一緒に味わいます。
日本酒に添える食べ物を「肴(さかな)」や「酒のあて」と言いますが、日本酒は食中酒として、食事とともに味わうお酒として親しまれてきました。特に、米の味わいがしっかり感じられる純米酒の燗酒は、まるでご飯でおかずを食べるのと同じような感覚で、燗酒もおかずと一緒に飲むと合う、というのは頷けます。

アメリカからフランスへ。30年以上年前から続く賀茂泉の海外展開

賀茂泉は30年以上前から海外との取引を開始しました。
最初はアメリカ西海岸からスタートし、その後ヨーロッパでの取引が始まり10年ほどになります。
現在は、フランス、スウェーデン、インドネシア、アメリカ西海岸、中国、香港などの海外14カ国に輸出しており、インポーターはいませんが、ベトナムとも取引があります。
アメリカへは年間3万本を輸出しており、中でも純米吟醸生原酒でつくったアルコール度数18度のにごり酒「にごり吟醸Summer Snow」は、アメリカへの輸出専用に製造・出荷しています。なめらかな口当たりとクリーミーな味わいは肉料理との相性が良く、人気です。
「冷やすとパンチがありますが、実は燗にしても美味しいです」と、意外な楽しみ方をゴティエさんが教えてくれました。                                                                 近年、積極的に市場開拓に取り組んでいるのがフランスです。
日本酒の知名度はまだまだ低く、ややもすると中国の蒸留酒「白酒(パイチュウ)」と混同され、アルコール度数の高い酒というイメージから敬遠されがちです。
パリ以上にフランスの地方都市では、日本酒の認知度は低いことから、フランスの酒販店や消費者に正しい日本酒の知識を伝える必要があります。
賀茂泉は広島県日本酒ブランド化促進協議会への加盟により、フランスでの展示試飲会への出展やプロモーションなどを重ねてきました。
2019年には、協議会でブルゴーニュ、リヨン、ナントなど、フランスの地方都市にある星付きレストランを訪問。シェフに各蔵元の日本酒をテイスティングしてもらい、地元食材を使った料理をつくってもらうという試みを実施しました。
そして、リヨン近くの星付きレストランで、川魚やスズキなど、地元産の海の幸と賀茂泉の純米醸造酒によるコラボレーションを行ったところ、評判は上々。
「強い酒というイメージを払拭し、常温や冷酒の日本酒が白ワインと同じ感覚で料理とともに味わえる酒であると理解を広める機会になり、手ごたえを感じました」とゴティエさんは振り返ります。
同年、協議会がパリで開催した展示試飲会「サロンドサケ」では、賀茂泉の純米酒「造賀(ぞうか)」が好評でした。
東広島市造賀地区にある賀茂泉の田で育成・収獲した山田錦で仕込んだ純米酒で、山田錦ならではの柔らかでキメの細かい口あたりが特長。ふくらみのあるうま味は、冷酒、常温、 燗、といろいろな飲み方が楽しめて、料理との相性も抜群です。
「純米吟醸の『朱泉本仕込み』が煮込みや肉など、濃いめのソースの料理に合うのに対し、純米酒の『造賀』はさっぱりした飲み口 で、キッシュやサラミに合います」
とゴティエさん。
造賀純米酒の商品ページはこちらから
食中酒として料理とのマッチングの幅が広いのが日本酒の魅力の一つ。ワイン同様に食事とともに楽しめる醸造酒という理解が広まれば、日本酒をより身近に感じてもらえることでしょう。
また、開栓後でも、きちんと冷蔵保存すれば2週間から1ヶ月、美味しく飲める点も同じ醸造酒でありながら、ワインにはない日本酒の特質でもあります。
ワインのように日常的に家庭で飲むお酒として、日本酒が浸透するには、まだまだ時間がかかりそうですが、まずは手土産や贈り物、パーティーなどで飲む、特別なお酒として普及を図る取り組みを今後も協議会では進めていくようです。

日本酒の魅力を伝えたい

「同じ種類の米、同じ酵母を使って醸しても水や杜氏の技術、酒蔵の環境、蔵元の想い・考え方によって味に違いが出るのが日本酒の面白いところ。
広島県日本酒ブランド化促進協議会に加盟する11蔵を見ても、山、里、海、それぞれに異なる地域にあり、お酒の味にも個性があります。
例えば、山間部にあるは山岡酒造ではストロングでしっかりとした味わいの日本酒、海に近い盛川酒造はソフトな口あたりで魚介類に合う日本酒といった具合に、それぞれの持ち味があります。
だからこそ、日本酒を知れば知るほど、自分の好みの飲み方を追及し、冒険や挑戦ができる楽しさがあります。そんな日本酒の魅力を伝えていきたいです」
とゴティエさん。自蔵を含む日本酒の魅力をもっともっと開会にも伝えていきたいと意欲的です。



賀茂泉酒造株式会社
1912年(大正元年) 創業
東広島市西条上市町2番4号
https://www.kamoizumi.co.jp/

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